マーケティングリサーチ感

マーケティングリサーチ
マーケティングリサーチという分野があります。ようは、潜在顧客である消費者からアンケートをとったり、ヒヤリングしたり、グループディスカッションをさせたりして、消費者のニーズ・趣向を捉えようとする技術です。マーケティングリサーチは、なかなか奥が深く、学問としても研究され始めているくらい難しいものです。私は、昨年、勉強の一貫で、商店街でアンケートを取ったことがありますが、アンケートの選択肢の一つである「その他」の回答数が一番多くなってしまい失敗に終わった苦い経験があります。

こども店長出現は定石どおり
なぜ、こども店長が出現したかは、マーケティングを少し勉強したことがある方なら、簡単な質問かも知れません。それぐらい「定石どおり」のことでした。もう2年ほど前ですが、マーケティングの学者や、マーケティングリサーチをやっている実務家から、「そろそろ自動車のCMにこどもが出現するはずだ」といった声が出始めました。そして、現実に今年4月よりトヨタのCMでこども店長が出現しました。

ちなみにマーケティングリサーチに関しては例えば、以下のような本があります。
http://www.amazon.co.jp/dp/456969005X

■ どの車を買うか、こどもが決定権をもちはじめた
車を買うときに誰に決定権があるか?マーケティングリサーチでは重要な調査項目です。それを調べた結果、最近、こどもにも決定権がでてきたことが分かってきたようです。かつては、家族がどの車を買うかを決めているのは父親でした。そして徐々に母親の決定権が増してきます。それに合わせて女性に向けたCMが出始めました。ダイハツの「Cocoa」などは、もう「女性が決めてくれ、男は選ぶな」的なCMまでやっていて完全に女性に決定権がある前提でCMを作っています。一方、こどもが車を選ぶというのは、私には想像しづらいですが、つまり、両親が、ああでもないこうでもないと色々車を見ているときに、連れてきた子供が「この車がいい!」といってしまえば、子供が選んだその車に決定してしまう両親が増えたということでしょう。さて、各社のマーケッティングリサーチの結果はうわさでしか分からないのですが、どこの会社のものも大きくは変らなかったと思いますので、こどもに決定権がではじめたことはどの会社も気づいているはずです。

■とはいえ、タイミングが難しい
 だからといって時代を先取りしすぎても成功しません。まだまだこどもが「最も決定権をもっている」わけではありませんし、今後そうなるとも限りません。トヨタのCMにはそんな苦悩も伺えます。私の記憶では4~6月ごろまではこども店長が完全に前面に出ていましたが、最近はCMの最後に、「○○(車名)は減税、補助金も。」とだけ言うものが増えているように感じます。恐らく購入時のアンケートなどで、思ったほど、こどもの意見を参考にして買ったという人が増えなかったのではないかと想像しています。

■もっとも典型的な例は、紳士服売り場
 夫婦が紳士売り場に現れた場合、店員は、どちらに購入決定権があるかを見極めなければなりません。夫婦の意見が分かれたとき、夫に決定権がありそうなら夫が良いと言っているほうをおすすめし、妻に決定権がありそうなら妻が良いといっているほうをおすすめしなければなりません。「やっぱり私が選んだものは店員さんもいいといってくれた」という満足感を与えるのも小売店の提供価値の一部です。これを決定権が無いほうに与えると購入に結びつかない、つまり、決定権を持っているほうが不快になって帰ってしまうリスクが存在するのです。

■ベビーカーは少し違うパターン
 ベビーカーの購入決定権は今でも母親が握っている場合が多いようですが、可能なアプローチには少し違うパターンもあります。普通に考えれば母親へのアプローチとして、軽いとか持ち運びやすいとか押しやすいとか、そういう訴求をするでしょう。しかし、あるベビーカーの部品メーカーは、顧客である完成品メーカーから、軽い部品を要求されたにも関わらず頑丈で重い部品を提案しました。それは、「貴社のベビーカーに乗っている赤ちゃんから見える景色はこんなに怖いんです。だから、この部品で守ってあげないと」と訴え、その部品が採用されたそうです。(昔のベビーカーは車高が低く、その視点から素早く通り過ぎる大人を見ると怖いんだそうです)つまり、母親に「赤ちゃんはこんなに怖がっている」と訴えるとあなたの会社の製品は売れますよと、完成品メーカーに訴えたわけです。顧客のさらに先にいる最終購入決定者である母親に、使用者である赤ちゃん視点で訴えかけるという、ちょっとした変則パターンです。

■BtoBの営業でも重要な要素
 「誰が購入の決定権を持っているか?」を見極めることはBtoBの営業でも重要な要素になります。営業に行って出てきた担当者が何の決定権もないケースは良くあることでしょう。逆に上司は部下に何を購入するかを部下に完全に任せて承認だけするなどのケースもあるでしょうから、一概に役職が高い人が実質的な決定をしているとも限らず、見極めはなかなか難しいものがあるのだと思います。場合によっては受付の人が強大な営業拒否権限を持っている場合もあると聞きます。いかに本当の決定者に訴えかけるかは重要な要素のひとつですが、これに関しては私は詳しくないし経験もないのでこのくらいにしておきます。