書籍「現代政治学」の感想3: 正しい結果を導き出せる仕組み

書籍「現代政治学」(http://www.amazon.co.jp/dp/4641123314/)を読んで感じたことを
取りとめもなく書いています。

読んでひとつ発見だったのが、
正しい結果を導き出せる仕組みを作ることが重要であるということである。
ダムは必要かどうかとか、外交でこういうべきだったとか
個別具体的にどっちがよかったかという議論は多い。

しかし、本当に重要なのは、正しい結果を導き出せる仕組みを作ることにある。
どういう話し合いをすれば正しい結果が出せるか、どういうメンバーがいいのか、
どういう検証ができるのか、思いつきでないしっかりとした意見は
どのような定量的な検証方法、コンピューターシミュレーションがあるのか。
つまり適当に考えるのではなく、どういうプロセスを踏めば正しいアウトプットが
出せるのかを良く考えることである。

もっと大きなことを言えば、どんな選挙制度なら政策を間違えないのか、
三権分立はあの構造でよいのか、ということをしっかり考えることは重要である。
どんなに判断力の優れた人間がリーダーになっても、
正しい結果を導き出せる仕組みがないとその組織はダメになっていくだろうし、
逆にたいした人材がいなくてもこの仕組みさえあれば正しい結果を導き出せる。
というよりも優れた判断力をもつというのが現実的でなく
多様なインプットをもって初めて良い実行ができる。
誰かが間違えたときに対処できるかどうか?ということが
仕組みづくりを考える上で良く問われることである。

行政が法律を守らなかったら?司法が判断ミスをしたら?
国会がおかしな法律を作ってしまったら?
すべてのケースにおいて何らかの対処方法があるように
国の仕組みは作られているのである。

そして小選挙区は2大政党制になりやすく、
比例代表は小政党が乱立しやすい。
どちらも長所短所があるのだが、日本はそれをうまく組み合わせた。
実に良くできた選挙制度だと、初めて気がついた。
衆議院参議院の使い分けがハッキリしないことは問題ではあるが)
この選挙制度だけをとっても膨大な学問領域になっている。

小さい政党がある程度存在した方が多様な意見を反映しやすい。
しかしながら余りにも小さい政党が多すぎると
毎回大連立政権となり判断が遅くなり政府運営が不安定になる。

実は多様なインプットが重要であるがそれを分析・演算する
政府の部分では余りにも多様だと不安定になる問題がある。
戦前の日本は大臣が総理大臣に逆らってもすぐには免職されない制度だった。
そのため議論が紛糾することが多く、悲惨な戦争を招いてしまった
要因のひとつだといわれている。
その反省を踏まえて戦後においては、
総理大臣がいつでも自由に大臣を罷免できるようにした。

いっけん、独裁制を強め、多様性を排除しているように見えるが、
総理大臣が選ばれるまでには数々の多様なインプットがあり、
そして法律を超える行動は立法する必要があるため国会での審議が必要であり、
だけれども法律の範囲内の早急にすべき活動や
政府の活動の全体的な整合性を取るためにどうしてもあまり合意されていない
ことをしなければいけない領域について、
そして、外交などは一貫性をもって対応できるという仕組みなのである。

もちろんこの仕組みはこれからも進化していくべきであるし、
よりよい仕組みづくりは多くの人たちによって研究されているであろう。
しかしながら、現在の仕組みはある程度は良くできていると私は感じた。

ちなみにこれまでこのような社会学とは無縁と思われていた
コンピューターシミュレーションの世界もこれらの領域に参入してきている。
(例えば、 http://www.amazon.co.jp/dp/432660221X/
シミュレーションも議論の材料にすれば、よりよい議論ができるのではないかと思う。

会社経営も同じようなことがいえる。
正しい判断を出すための話し合いの仕方、間違えた場合のけん制の仕方、
間違え続ける人が現れた場合の対処方法、そして、多様なインプットの仕方。
良い企業というのはこういうところがうまくいっているのだと思う。