書籍「現代政治学」の感想4: グローバル・プログレマティーク

書籍「現代政治学」(http://www.amazon.co.jp/dp/4641123314/)を読んで感じたことを
取りとめもなく書いています。

グローバル・プログレティークというのは、つまり、
世界的な人類共通の課題であり、一カ国が取り組んでも解決しない問題のこと。
政治においてもこれを考慮して、国際政治について考えないといけない
時代がやってきたということだと思う。
国際感覚というのはあらゆる分野で必要になってきたのだろう。
(ちなみに国際感覚と外国語が話せるかどうかは全然違う。
 多いのが英語が堪能でアメリカしか知らない、国際感覚がない人。
 また、英語ができる人の中には英語が通じない国に行きたがらず
 結局国際感覚が身に付かない人も少なくない。
 もちろん英語がうまくてアメリカしか行ったことないけど国際感覚抜群の人や
 一度も海外に行ってないのに国際感覚がある人も多い。)

この本では、3つあげている。
 核、飢餓、環境
もちろんこの3つだけではない。また、グローバル・プログレティークは
国以外にも国連もそうだし、NGO多国籍企業が解決に尽力する場合も多く、
政府だけが取り組んでいるわけではない。
ある意味国際政治は政府に限らず、NGO多国籍企業も含んで
みんなで問題解決方法を考え、問題を解決していくことであると言える。

核の問題、環境の問題も思うところがたくさんあるが、ここでは、
飢餓の問題だけ書いておこうと思う。なぜなら、意外な発見が多かったのだ。

まず、世界の食糧生産と、世界の人口からして必要な食糧は生産量のほうがかなり多い。
つまり世界では食糧が余っているのだ。にも関わらず十分な食糧が手に入らない人がたくさんいる。
さまざまな原因があるだろうがこの本では、根本原因として、内外格差を取り上げている。
まず外の格差であるが、これは先進国と発展途上国の差である。
発展途上国内は物価が安く、食糧を買うのに大金を払えない。
ところが先進国は物価が高く相対的にお金を持っているので、
食糧を買うのに金をかけることができる。
食糧を売る側としては先進国に売ったほうが高く売れる可能性があり、
結果、食糧の価格が上昇し先進国の人たちだけが買えるという事が起こる。
生産地が発展途上国であったとしてもだ。
食糧の多くは先物市場が存在し、投資家が取引を行っている。
まさしく、先進国の投機が発展途上国の飢餓を生んでいる一因にもなっている。
売買価格をどのように決めるべきかもう一度、考え直した方が良いかもしれないし、
なかなかどうすればよいか難しいが、シミュレーションも含めて議論すべきだろう。

飢餓に苦しんでいるのに外国に食糧を売るというのはどういうことであろうか?
これは国内の格差である。すなわち、
田畑を耕作している人とできた食糧の所有者が違うのである。
そう、地主と、地主に雇われた労働者である。
自分は田畑を耕して食糧を作っているのに飢餓に苦しんでいるのである。
地主は、国内だろうが国外だろうが高く買ってくれるほうに売る。
ただ、それだけである。土地を持っていないものは数としては圧倒的に多く、
地主側が賃金をかなり自由に決めている。
この格差が、食糧を先進国へ流出させている一要因である。

これに関してはこの本は、珍しく解決策を意見している。
学術的な本なので、淡々と事実を述べることが多かったこの本が、
主張を繰り広げ始めたので驚いた。それは農地改革である。
すなわち、地主から強制的に土地を取り上げ、労働者に渡すのである。
これは戦後すぐの日本でも行われた。そのおかげで、これだけ格差の少ない、
平和な世界が展開されたといっても過言ではないだろう。
これがなかったら、日本でも大規模なスラム街がそこらじゅうに存在する国になっていたかも知れなし。

農地改革は客観的に見ればやるべきであることは分かるのだが、
実際には地主が政治的な権力も持っていることが多くなかなか実現が難しい。
しかし、これが世界中で行われないと飢餓の問題は終わらない。

というのも飢餓で苦しむ貧しい人々だからこそ、子供を多く作る必要があり、
ますます貧しい人が増えていくからである。
貧しい人たちは一家を支えるために多くの労働力が必要となるため、
子供を多く作り学校に行かせずに子供のころから働かせる。
学校に行ってないので、他の職業に付くことも難しく、またそれを繰り返す。
これは、貧しいからこそ人口増加が起こるのであって、
人口が増えているから貧しくなったのではない。
地主たちに対して労働者はどんどん増えていくので、
給与の決定権がますます地主にうつり、格差が広がっていくのである。

では、先進国は何をすれば良いのだろうか?
良く食糧支援というものが行われているがこれは逆効果であると指摘している。
無料の食糧が流入してくると地元で作られた食糧が価値がなくなっていき、
ますます地元で作った食糧が外国へ流出したり、
農業自体をやめてしまうことを助長するからである。
安易で長期的な食糧支援は、それに依存してしまうため、
飢餓を助長するだけである。
(もちろん災害時などの一時的な支援は絶対に必要である)

どのようなことでもそうだが、安易に助けてあげようという行動が
発展途上国を逆に苦しめる場合がある。
自己満足的な支援ではなく、先進国は、自分達は、
一体何をすればいいのか、部分的な視点ではなく、
全体感を持った、一貫性のある行動が必要だろう。