書籍「現代政治学」の感想5: 政党と活動資金

書籍「現代政治学」(http://www.amazon.co.jp/dp/4641123314/)を読んで感じたことを
取りとめもなく書いています。今回が最終回です。

政党は社会のさまざまな利益や意見を集約し、つまりインプットの集約を行い、
国会や政府の政策過程・決定に反映させようとする、つまり演算を行わせる組織だ。
政党は政府ではない。社会と政府をつないでいる。

社会における政党の役割は、与党であれば、政府に大臣を送り込み
政治そのものを行う、つまり政党と政府は近いものとなる。
野党の場合は、さらなる議席数獲得を目指し、与党となるべく、
準備をする野党もあれば、一貫した社会利益をし続ける野党もある。
いずれにせよ野党は政府でもなければ企業でもない組織である。

与党になる準備をする野党は特に、与党と同じくらいの
政策分析機能や、法律案の作成、社会がどうなっているかの調査など、
与党と同じような機能を持ち、いつでも政府としての能力を発揮できる必要がある。
これは社会にとって政権を選択できるという価値を提供し
つまり、現在の政府がだめなら取り換えられるという競争原理を供給するため、
社会的な便益は絶大である。
企業にとっては、企業がよい財やサービスを効率的に提供し社会の効率化に貢献できなければ、
競争原理によって他の企業に顧客を奪われるという競争原理があるため、
日々進化し続けられる。これと同じような競争原理が政府にも与えられ、
より便益の高い政治が行われる原動力となる。

というわけで、与党はもちろん、野党も社会にとって有用であり、
そういう意味では何らかの形で活動を維持するお金が入ってくるべきである。

しかし、どのようにお金を集めるべきであるかという問いは大変難しい。

単純に考えれば、その政党を支持する人たちがお金を出し合って維持すべきである。

しかしながら、特に企業からの献金などは他の部分の公正な競争を阻害する場合がある。
言うまでもなく、特定の企業が有利な入札や法律を作ってしまう場合である。
このようなことが起きてしまうと、企業間の公正な競争が阻害され
むしろ逆に社会の効率性を落としてしまう場合がある。
また、お金持ちが支持する政党が有利という事態になれば、
お金持ちが自分たちだけの利益を考え出したり、お金持ちの考えが政策に反映される
ウエイトが高まってしまうとインプットの多様性を失い危険である。

じゃあ、税金でねん出すべきかといえば、これはこれで問題がある。
政府が政党に活動資金を出すとなれば、そもそも野党は
与党が決める配分でお金を受け取ることとなり、公正な議論を阻害する要因になりかねない。
つまり、配分を減らされるプレッシャーが発生してしまう。
たとえば、比例代表の獲得票数で配分するなど、
よっぽど機械的な方法でやらない限りは政党間の公正な競争を阻害するだろう。
ただ比例代表の獲得票数で配分する方法のみだと、議席を獲得するまでは
どうするのか?という問題も発生する。

政党はどのようにお金を集めるべきか?
どのような集金方法なら、政党間の競争も、そのほか企業間などの競争も阻害せず
社会の便益を増すことができるのか、
これはNPO同士の公正な競争方法以上に、難しい問題であり、
まだ人類が解決していない、社会制度の最重要な問題の一つと言って過言ではないだろう。